「公務員なんてほとんどいらない」と本気で思っているのか? という話

 

 最近、「公務員なんてほとんどいらないんじゃね?」、「公務員なんて減らせばいいのに」という意見をいろいろなところで耳にします。

 

 有名どころですと、堀江貴文氏と落合陽一氏の共著には、「公務員がやるべき仕事なんて、ほとんどない。これから20〜30年のスパンだけで見ても、公務員が絶対安泰だとはまずいえない。なんでもスマートフォンで申請できるなら、誰も窓口に足を運ばないだろう。」(堀江貴文,落合陽一『10年後の仕事図鑑』 SBクリエイティブ株式会社 2018年 98頁)と書かれているくらいです。

 こちらは極論とはいえ、そういう意見を持っている人がいるというのは間違いなさそうです。正直、私はこういう意見を耳にするとモヤモヤしますね。

 

 確かに公務員の仕事には、機械による自動化によって効率化を図れる部分が、多く存在すると思います。

 けれど、明らかに自動化が難しい部分があるのも事実です。たとえば、上述した「なんでもスマートフォンで申請できるなら、誰も窓口に足を運ばないだろう。」という部分を例にとって考えてみます。

 

そもそもパソコンやスマートフォンを持っていない人がいること、あなたはご存知ですか?

 当たり前のようですが、ご高齢の方がパソコン、スマートフォンを持っていない場合や、パソコンやスマートフォンを持っていても使い方を十分に把握していない方がいらっしゃいます。そのような方々には、どのように対応するのか? 上述の意見には、この問題点に対する解答が用意されていません。

 

 この意見に対して、「20〜30年後なら違うのでは?」という指摘が想定されますので、先に述べておきます。

 私の知り合いに60歳くらいの女性がおりますが、パソコンやスマートフォンの使い方を把握していません。せいぜい電話やメールの機能を利用するくらいだと言っていました。そんな方が、80〜90歳になってもスマートフォンやパソコンを使って、いろいろな手続きができるのでしょうか……

 ただ、いずれITリテラシーが高い人たちが高齢者になってくると思いますし、そうなれば話は変わってくると思いますが。

 

 次に「公務員のやるべき仕事なんて、ほとんどない。」という部分を例にとって考えてみましょう。

 

もしかして、公務員の仕事を窓口での対応だとか、書類の作成だけだと思ってませんか?

 まさかとは思いますが、「公務員なんてほとんどいらない」と考えているのに、公務員の仕事内容を把握していないなんてこと、ありませんよね?

 一口に公務員といっても、国家公務員と地方公務員に大別されていて、さらに地方公務員の中でも自治体職員(市町村役場、都道府県庁の職員など)、看護師、教職員(学校の先生)、警察官、消防士など、様々な職種がありますよ。

 

 公務員と言われてパッと浮かびやすいのは、「窓口業務」でしょうか。つまり、役場(役所)の窓口にいる方々ですが、その役場(役所)の中でも、機械での自動化が難しい仕事を担当している部署があります。

 たとえば、いわゆる技術系と呼ばれる人たちの中でも、第一次産業の支援をしている方々がいる部署です。(第一次産業とは農業、林業水産業などを指します。)

 私は林業に関係する部署にいたのですが、職員が山林に入って作業しなければいけない仕事も少なくありませんでした。たとえば、自治体の管理している登山道の整備も、外部に委託するだけの予算がないので職員で行っていましたね。

 

 そういう場面を踏まえて考えると、「公務員のやるべき仕事なんて、ほとんどない。」という意見は何を根拠に言っているのかわからないですし、議論が浅いところで止まっていると思います。

 公務員のやるべき仕事、公務員がやらなければいけない仕事は具体的に何か。そして、それらの比率はどうなのか(2:8なのか、それとも1:9なのか)。そういう議論が必要なのでは?

 その結果、「ほとんどないね!」となるなら、それでいいです。公務員だって無駄な仕事は減ったほうが嬉しいですからね。

 

 次に、「公務員なんて(職員数、給料)減らせばいいのに」 という意見についても考えてみて欲しいです。

 

まさか、公務員全体の職員数、給料が減ればいいなんて思ってないですよね?

 実際に見たことはない(と思います)が、仕事量が少ない部署で高い給料(約40万円〜50万円)をもらっている人がいる、というのは職場でも耳にすることです。

 

 しかし、先ほど述べたように公務員と一口にいってもいろいろな職種があるわけですよ。その中でも最近になって激務かつ一手不足であることが認知されつつあるのは、学校の先生です。

 こちらは様々なデータが他のWEBサイトに上がっているので、そちらをご覧いただいた方がわかりやすいでしょうが、1日あたり平均で11時間を超える労働時間という調査結果を文部科学省が発表しているところです。(R

 イメージしにくいと思いますが、休憩を1時間取ったとしても、平均で午前8時から午後8時まで働いているということです。とてもホワイトとは言いにくいかと。

 

 学校の先生は極端な例だと思いますが、要するにどの分野の公務員を、どの程度減らしたいのかはっきりしないのに「とりあえず減らせ!」というのは、いかがなものか? ということを言いたいのです。

 しかも、かたや仕事量の少ない部署で高い給料をもらっている人もいれば、安い給料で長時間働かざるを得ない職員もいます。せめて、そのような人たちのことを踏まえてから、「給料を減らせ!」と言っていただきたい。

 よくも悪くも、公務員の給料は「安定」しています。成果を出している人でも一定の給料ですし、働かない人でも一定の給料をもらえるわけです。(R

 

終わりに

 影響力の高い人の意見を鵜呑みにせず、まず事実を明らかにしてから、自分の頭で考えて欲しいと思います。これは私自身も気をつけなければいけないですな。

 

※現場寄りの意見なので公平性に欠けていたり、考え方が甘い部分もあると思います。このような記事は批判されてもおかしくないと考えてますが、少しでも耳を傾けていただけると嬉しいです。